季節が私をあの場所へ帰す

空気がひんやりとしている。

電車の中で、当時の歌を聞いていたら

ぼんやりとあの時の私達が頭に浮かんだ。

あの寒い部屋で、静かな音楽が鳴っていて、

よく抱き合った。

何をそこまで求めていたのか、

ただただ繋がりを確かめたかったのか、

だけど愛は確かにそこに合って、

2人はいつもそこに居て、

未来は曖昧だったけれど、

今が続けば、そこは未来だったし、

第一、彼が居ない生活が全く想像できなかった。

曜日は決まって金曜日。

コートを着こんで、大荷物を持って、

私が息を切らして階段を登ると、

いつも彼が迎えに来てくれていた。

よく帰り道に行ったドラッグストアの名前も、

あの大きなスーパーの名前も、

彼のお気にいりだった居酒屋の場所も、

サイゼリアで仲良くしてくれた女の子の名前も、

一度だけいった河原の公園も、

みんなみんな忘れてしまった。

ありがとう、って、もっと伝えておけばよかったな。